こんにちは。いま、博士課程で文系の研究を続けている先輩です。
あなたはいま、進学を前にして、いろんなことを考えているのではないでしょうか。
「本当に進学してよいのか」「就職は大丈夫か」「そもそも研究に向いているのか」……。
この記事では、あなたと同じように文系で博士課程に進んだ私が、いまだからこそ伝えたいことを、率直に書いていきます。これは誰かの「正解」ではありません。でも、悩みながら進もうとするあなたのヒントにはなるかもしれません。
第1章:なぜ、博士課程に進むのか?
1. 進学の動機を、他人の言葉ではなく「自分の言葉」で語れますか?
「先生に勧められたから」「修士までやったから、次は博士かと」
それでもいいんです。でも、長くて不確実な博士課程を生き抜くには、「自分の中の納得」が必要です。
たとえば──
- この問いに、自分の人生をかけて向き合いたいと思えるか?
- いま、どんな問題意識を持っていて、どうしてそのテーマなのか?
研究の道は、「好き」だけでは乗り越えられません。でも、「好き」という気持ちがなければ、途中で折れてしまいます。
「なぜ、あなたはその問いにこだわるのか?」この問いに、少しでも言葉を与えられるようになってください。それが、進学後に何度もあなたを支えてくれる「芯」になります。
第2章:文系博士課程の現実
1. キャリアの不安は、正直に言って、大きいです
文系博士課程の出口は、決して広くはありません。大学教員になるにも、ポストは非常に限られ、しかも競争は激しい。
それでも、「このテーマで研究を深めたい」「いまは問いと向き合いたい」と思えるなら、進む価値はあります。
ポイントは、「研究の先に、どんな人生を描きたいか」。
アカデミアだけでなく、NPO、出版、ライター、文化政策、専門職、公務員、教育、あるいは起業など、知を活かす道はいろいろあります。
進学前に、キャリア支援センター、修了生の進路調査、OG/OB訪問などもぜひ活用しておいてください。
2. 「生活の安定」と「研究の時間」の両立は、案外むずかしい
文系博士課程では、経済的に安定した奨学金やRA(リサーチ・アシスタント)ポストが少ない場合もあります。
多くの人が、非常勤講師やアルバイトをしながら研究を続けています。
お金の不安は、研究の妨げになります。
進学前に、日本学術振興会特別研究員(DC)などの制度を調べておきましょう。応募に備えて、計画書の書き方も早めに練習しておくと◎です。
第3章:研究の進め方──「孤独」と「対話」のはざまで
1. 「孤独」は避けられないが、「対話」を求めてよい
文系研究の多くは、自分の机に向かい、黙々と読み・考え・書く作業です。
だからこそ、悩みを共有できる仲間がいると、全然ちがいます。
- 同じ分野の先輩・同期・後輩
- 学会で出会った研究者
- SNSや研究会で知り合った仲間
「一緒に勉強しよう」「論文を読んでほしい」と言える関係が、あなたの研究を豊かにします。
2. メモとノートは、あなたの「思考の鏡」になる
アイデア、疑問、言葉にならない違和感──全部、書き残してください。
研究とは、日々の違和感を言葉にしていくプロセスです。
1年後、3年後に、「あのときの気づき」が研究の核になっていた、と気づくこともあります。
第4章:指導教員との関係
1. 相性がすべてではないが、影響はとても大きい
文系では、指導教員と1対1で進めるスタイルが多いです。だからこそ、相性は無視できません。
考え方、研究のスタイル、フィードバックの丁寧さ、研究以外の相談がしやすいか……。
「合わないかも」と思ったら、無理に一人で抱え込まないでください。
副指導教員、他のゼミ教員、事務、学生相談などに頼るのは恥ではありません。
第5章:書けない、進まないときの乗り越え方
1. 「書くこと」もまた、練習である
最初からうまく書ける人はいません。博士課程は「問い続ける力」だけでなく、「書く力」を鍛える場でもあります。
- 学会で短い発表をしてみる
- ブログや読書メモを書く
- 先輩の論文を構造的に読んでみる
研究の「型」を学び、少しずつ自分の「型」をつくっていきましょう。
2. 「書けない」のは、考えが足りないのではなく、頭が疲れているのかもしれない
考えても書けないときは、無理をしないでください。
歩く、寝る、人と話す、本を読む。回り道のように思えて、それが大切な「準備期間」になります。
第6章:生活と心のマネジメント
1. 自分を壊さないこと、それが最優先
- 眠れていない
- 食事が適当
- 人に会っていない
- 感情がなくなってきた
- 論文のことを考えると吐き気がする
これらのサインを感じたら、「自分を守ること」を最優先にしてください。
博士課程は、心と身体の両方を使う場所です。助けを求めることは、弱さではなく「知性」です。
第7章:それでも、なぜ研究するのか?
博士課程は、「答えのない問い」に挑み続ける旅です。
報われないこともある。社会から理解されないこともある。けれど、それでも「知りたい」という思いがある。
自分の問いに、自分の言葉で挑む経験は、一生の財産になります。
社会にすぐには評価されないかもしれない。でも、その営みは、確実に世界を少しだけ広くし、深くします。
最終章:進学を前に、不安でいっぱいのあなたへ
ここまで読んでくれてありがとうございます。
博士課程に進む前、私もたくさん悩みました。「本当に価値があるのか?」「将来どうするのか?」
でもいま、私はこう言えます。
「あのとき、自分の問いに正直になってよかった」と。
たとえ迷っても、不安があっても、あなたの問いは、あなただけのものです。
その問いがある限り、きっと道は続いています。
どうか、自分のペースで、自分のやり方で、歩いていってください。
あなたの旅路が、豊かであるように願っています。